松江市の特別支援教育の取組み1 松江市の特別支援教育の概要 松江市における特別支援教育の特徴は、幼時期から中学卒業まで一貫した支援体制を確立しようとしているところである。 就学前の早い時期から支援の手が差し伸べられるように、 1)1歳半検診や3歳児検診に置いて、発達の遅れが気になる場合には発達健康相談で現状を的確に判断し、未就園の3歳児までを対象として小規模療育事業の「なかよし教室」に置いて母子支援を行っている。 2)3歳児以降の幼時については、各幼稚園に設置されている「特別支援幼時教室」と「ほっと相談室」がその役割を担う。 特別支援幼時教室には、特別支援教育指導員(サポート、TT)や特別支援教育介助員(排せつや食事・移動の介助)を市単独事業として配置し、保護者との連携を図りながら幼時の実態を把握、「個別の指導計画」を立案し指導に当たっている。 ほっと相談室では、担当者を配置し、いつでも、気軽に、誰でも利用できる相談の場として常設している。また、固定の常設相談だけでなく、保護者のニーズに応じた巡回相談会や教育相談会を実施し、支援の必要な子どもの早期発見、早期支援を行い早い段階からの就学指導に役立てている。 3)支援を必要とする子どもたちに、幼稚園から小学校・中学校まで支援の連続性を図るための保護者の参加のもと「個別の教育支援計画」と「個別の移行支援計画」を作成している。その個別の情報を最大限に発揮させる手段として松江市では、「まつえしサポートファイルだんだん」を作成し活用している。このファイルには、子どもの成長や発達の様子、相談記録、診断や検査結果などを全て記入し、保護者にファイリングと保管をしてもらって、必要な情報を提供してもらうことにしている。つまり、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した適切な教育支援を行うため、保護者や関係者との情報の共有化を図ることを目的としている。 4)小中学校における特別支援教育体制 松江市では、全ての私立幼稚園、小中学校において特別支援教育を進めている。小中学校においても、特別支援学校介助員(排せつ、食事、移動、安全面の介助)を配置し、特別支援学級についても、対象となる児童の就学予定学校に特別支援学級の新設が必要と認められれば、在籍者が1名であっても新たに学級を開設するとしている。ほかにも、小中学校の経験豊富な教員を教育相談員として委嘱し、保育所や幼稚園、小中学校の教育相談にあたっている。また、松江市では平成22年度より全中学校区に置いて小中一貫教育を進めており、その中で、特別支援教育における小中交流や支援の一貫性を図る工夫など連携強化の取組みが始まっている。 5)さらに、松江市では幼児期から青年期に向けた一貫した支援体制の新たな拠点として、特別支援教育総合支援センター(仮称)を平成23年度に設置すべく準備を進めている。 考察 もともと松江市は、昭和50年代には幼稚園に特殊幼児学級を設置するなど、意欲的な取り組みがなされてきた。そこには、保護者や教育関係者のご努力があったことは無論だが、市長のリーダシップも大きかったとの報告があった。 障がいを持つ子も同じように地域の中で大切に育てていこうと云う当たり前のことが、松江市では市と教育関係者、住民との連携によって実践されている。特別支援教育の分野だけでなく、子どもの体力向上と目的とした学校校庭の芝生化事業、小中学校の一貫教育の取組みなど、子どもと地域の将来にとって、いま、何をなすべきなのかという真摯な問いかけと具体的な対応策、そして実践力が、多くの市民の共感を得ているような気がする。 結局、自分たちの地域の将来は自分たちが決めるという強い決意がなければ、何事も前に進まないということではないだろうか。今後、名取市の教育行政にさまざまな示唆を与えてくれる視察研修だった。 |